おかしなもので、物を作り終えた後、気持ちに余裕が出てくると、作ったものの粗を探し始めます。
粗が見つかると、現状でも問題なく使えるのに、その粗が気になって頭から離れなくなります。
これは改善を進める前向きな思考形態でもありますが、不必要な手直しによって壊してしまう危険な考えでもあります。
そんなある日、ふとヒーテッドベッドを触ると、ベッドと固定しているねじとの間でガタがあることに気が付きました。
HuxleyのヒーテッドベッドはY軸移動台座と3つのネジで繋がっています。
ホットエンドがZ軸移動においてオーバーランしてヒーテッドベッドに衝突しても損傷しないように、台座との間はネジで完全に固定しているのではなく、下方向についてはネジに通したスプリングで支えるようになっています。
したがって、このネジとベッド側のネジ穴に遊びがあると、今回のように水平方向のガタになってしまいます。
現状はおそらく、ネジの頭とベッドの摩擦のお蔭で目に見えてガタが発生することがないのでしょう。
しかし、重いベッドを高速に移動させているので、実際には多少は滑っているのかもしれません。
そう考えると、折角、苦労して調整したヒーテッドベッドですが、これを放置できなくなりました。
二本で支えている右側のネジの方は、ガタは確認できません。
苦労して調整し、ネジロックで固定したベッドですが、苦渋の気持ちで取り外しました。
3.1mmです。0.1mm大きい穴です。
ネジ穴は取り付けやすいように、ある程度の遊びを設けることがあるので、意図的に大きくしているのかもしれません。
ネジ山のとがりには丸みが発生するので、M3ネジであっても有効径は3mmより小さくなります。ISO規格では2.773と定められているので、0.2mmぐらいは小さくても不思議ではありません。
実測から、ネジ穴とネジとの遊びは0.2mmであり、これがガタの原因でした。
したがって、この遊びを少なくする必要があります。
今回はブッシュをはめることにしました。
取り寄せたブッシュはポリアセタール製です。
耐熱性が気になるところですが、ベッドのネジ穴付近にはLEDが実装されており、LEDの耐熱が80-90度とポリアセタールの耐熱温度より低いので問題なしと考えました。
径を測定すると2.95mmです。
ネジ切りしていないので、誤差が少ないようです。
これで0.2mmあったネジとネジ穴の遊びは、0.05mmに縮小することができます。
ハンドリーマーを使いベッドの裏から少しずつ広げます。
広げすぎないように少し広げてはブッシュをはめてみるを繰り返します。
効果を確かめようとベッドに触ってみると、ガタは皆無でした。
0.05mmあった遊びも、ボルト位置の誤差や傾きなどとの作用でガタがなくなるようです。
これが今回の改善の代償となってしまいました。
完成品に手を加えるということは、リスクを負うことになるのです。