フィラメントリールスタンド(filament spool roller)の製作

投稿 火 9/17 22:33:21 2013 | デジタル工作機 | hotall

3Dプリンタに出力する際、フィラメントを置く場所に困ります。
実はRepRapにはフィラメントを設置する装置がないのです。


フィラメントはリールに巻かれた状態で供給されます、不用意に置くと、エクストルーダにフィラメントが取り込めず、出力が失敗してしまいます。

私は3Dプリンタ本体を組み立て後、しばらくの間、写真のように寝かせていました。

こんな置き方でも大概はフィラメントがリールからうまく解けていくのですが、場所を取りますし、何より何時フィラメントが絡まってしまうか不安で仕方がありません。
そこで、フィラメントリールスタンドを作成することにしました。

設計するにあたり、フィラメントリールを扱う上で最も注意すべき点は、このリールには規格が無いことです。
メーカーあるいは販売店によって、様々なリールが使われます。

私は最初、観覧車型のスタンドを考えていました。
ところが、このリール規格の事情があるので、頭を痛めていました。
観覧車型の場合、次の寸法のバリエーションを考慮しなくてはなりません。
・リールの径
・リールの幅
・リール穴の径
これら3つのバリエーションに対応するにはかなりの工夫が必要です。

色々思案していると、リール穴を支える観覧車型ではなく、自転車練習用のローラー台のようにリールの縁を支える方式があることに気が付きました。
これだと、リールの径や穴の径をそれ程意識する必要がなく、更にリールの幅も左右のローラー台を分離することで対応できます。


設計はAutodesk 123D Designを使用しました。

FreeCADも使ってみましたが、まだベータ版の為か、ファイルが保存できないなど、思ったように動作しません。
一方、123D Designもまだ不具合があるようで、私の環境では頻繁に落ちましたが、保存をこまめに行うことで、何とか作業を進められました。

入力後、3Dプリンター出力用にSTLファイルを作成します。

今回のスタンドは4つのローラーとそれを保持する左右のホルダーから成ります。

ローラーはベアリングを2枚のディスクで挟み、シャフトで固定します。

シャフトも既製のボルトを使用せず、3Dプリンタで出力するすることにしました。
RepRapプリンタでは長い円柱を出力するのが難しいので、シャフトを縦方向に2つに分割することで対応しています。

シャフトを固定するのに、構造が簡単なCカン使いました。
これも3Dプリンタで出力します。

ローラーのパーツを出力したら、これを組み立てます。
シャフトにディスク-ベアリング-ディスクを通し、最後にCカンで固定します。

Cカンはシャフトの切れ込みに、シャフトの重ねた方向から(上下に重ねたように見えるなら、上または下から)差し込み、重ねたシャフトを挟むように、Cカンを90度回転させます。

同じ要領で4つ組み立てます。

次にホルダを2つ出力し、ローラーをはめます。

大概は、ホルダーの両端にはめますが、径の小さなリールの場合は、位置を調整します。

後はリールを乗せるだけです。

設置後の様子です。

動画も撮ってみました。

ベアリングのお蔭で、スムーズに回転します。

使わない時は、このようにコンパクトに格納できます。
下表は今回設計・使用した部品の一覧です。
3Dデータ(STLファイル)もアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
ローラーディスク8ダウンロード
ローラーシャフト8
ローラーCカン4
ホルダー2
ベアリング
・外径:19mm
・内径:6mm
・幅:6mm
4別途購入

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)の組立-ABSフィラメント

投稿 火 9/10 18:40:57 2013 | デジタル工作機 | hotall

PLAフィラメントでの調整が終わったので、今度はABSフィラメントに差し替えてテスト・調整を行います。







今回購入したABSフィラメントです。
白ですが、思っていたより透けていました。




まずはフィラメントの直径を測ります。
今回は、規格通り1.75mmでした。

スライサーの設定は、取り敢えず、PLAの設定に対してフィラメントの直径と温度のみを変更しました。
項目
フィラメントの直径(Filament Diameter)1.75mm
ノズル温度(Temperature-Extruder)240℃
ベッド温度(Temperature-Bed)110℃




フィラメントを差し替えます。

まず、ノズル温度をPLAが溶ける低めの温度150℃にして、手動でエクストルーダを逆回転させ、PLAフィラメントを抜き取ります。
比較的低い温度に設定した方が、ノズル内の溶けた材料がフィラメントと一緒に出易いです。

次に200℃に上げて、ノズル内部の溶けたPLAが重力で落ちてくるのを待ち、アセトンをしみこませたティッシュでふき取ります。

ABSフィラメントをエクストルーダに差し込み、手動でノズルまで送ります。
200℃のままでもABS樹脂は溶けるようで、写真のように残っていたPLA樹脂と一緒に出てきます。

最後に、240℃に上げて、手動でエクストルーダを操作し、PLAが混じらなくなるまでフィラメントを押し出します。




テスト出力してみます。

今回は、初回でうまくできました。
PLAよりも融点が高いので、蓄熱による硬化の遅れもなく、上部の形状もきれいに出力されました。

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)の組立-スライサー調整(まとめ)

投稿 金 9/ 6 18:09:49 2013 | デジタル工作機 | hotall

スライサー(Slic3r)の調整実験で得られた結果を現象別にまとめてみました。




■上部の形が崩れてしまう。



[原因]
材料を押し付ける力が強いため、熱の蓄積で温度が高くなってしまった上部がホットエンドの動きに引きずられ変形した。

[対策]
積層ピッチ(Layer height)を広くする。
フィラメントの直径(Filament Diameter)またはフィラメント送出量乗数(Filament Etrusion multiplier)を小さくする。
ノズル温度(Temperature-Extruder)を下げる。

■ひげができる。



[原因]
下の層との密着が弱く、はがれてしまう。

[対策]
積層ピッチ(Layer height)を狭くする。
ノズル径(Nozzle diameter)を小さくする。

■痩せる。



[原因]
材料の供給量が不足している。

[対策]
フィラメントの直径(Filament Diameter)またはフィラメント送出量乗数(Filament Etrusion multiplier)を大きくする。
ノズル径(Nozzle diameter)を大きくする。

■太り、細かな形状がつぶれる。



[原因]
材料の供給量が過剰、あるいは材料を押し付ける力が強いため、材料を押し広げている。

[対策]
フィラメントの直径(Filament Diameter)またはフィラメント送出量乗数(Filament Etrusion multiplier)を小さくする。
積層ピッチ(Layer height)を広くする。
ノズル径(Nozzle diameter)を小さくする。

■欠ける。



[原因]
エクストルーダの押し出し量に対応した量の材料がノズルから出ていない為、材料の供給が途中で終わってしまう。あるいは、押し出し開始時点から遅れて材料が出てくる。

[対策]
ノズル径(Nozzle diameter)を小さくする。

■1層目と2層目の間に隙間ができる。



[原因]
Z軸の0点が高い。

[対策]
Z軸のマイクロスイッチの位置を調整する。
Z軸のオフセット(Nozzle diameter)を小さく(マイナス値)する。

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)の組立-スライサー調整(実験)

投稿 月 9/ 2 10:42:46 2013 | デジタル工作機 | hotall

3Dプリンタは位置決めやフィラメント押し出し量や温度は制御できても、三次元形状を直接理解して成形することはできません。三次元形状データから3Dプリンタが理解できる制御データに変換するのがスライサーの役割です。

スライサーは直接3Dプリンターから出力特性や状況を取得できないので、事前に与えられたパラメータに従い、多分こう動作させれば正しく出力されるだろうとの推測の下で、3Dプリンタへの制御データを作成します。

しかし3Dプリンターは各々特性にばらつきがあるので、標準的なパラメータを使用すると、その出力結果にもばらつきが生まれ、期待通りの結果を得ることはできません。
そこで、このパラメータを3Dプリンタ毎に調整する必要があるのです。

ところがこのパラメータ、説明文を読んでも、どう出力結果に影響するのかさっぱりわかりません。
この辺のノウハウは専門家の頭の中にあるのでしょうが、初心者の私としては、実際にやってみて理解するしかなさそうです。

そこで、これから試行錯誤しながら、調整を行っていきたいと思います。
その過程で、各パラメータの特性が理解できればと思います。







このプリンタのプーリー(pulley-2off.stl)を標準的なパラメータで出力した結果です。
(この3Dデータはここからダウンロードできます。)

外観はそれっぽいですが、各層が不均一で直線的であるはずの歯型が波打っています。
また、写真ではわかりませんが、中央の穴にはひげが多数できています。
これでは、まだまだ実用レベルではありません。

これから、この形状を使ってスライサー(slic3r)のパラメータを色々試してみたいと思います。


[Print Settings]



[Layer height]
積層ピッチ(mm)です。
左から0.3, 0.35, 0.355, 0.362, 0.375, 0.387, 0.4, 0.425, 0.45

小さいほどひげが少なくなりますが、上部の方が変形します。
大きいほど、変形が少なくなりますが、ひげが多くなり、層の凸凹がはっきりします。
一番バランスが良いのは初期値の4mmのあたりでした。以後、この値は0.4mmとします。




[Infill density]
充填密度。
左から0.2, 0.4, 0.6

水平断面積が狭いためか、差異はありませんでした。
初期値の0.2にします。




[Speed Perimeters]
周囲の速度(mm/s)。
左から10, 30, 50

予想に反して、差異はありませんでした。
初期値の30mm/sにします。




[Speed Infill]
充填速度(mm/s)。
左から30, 60, 90

こちらも差異はありませんでした。
初期値の60mm/sにします。




[Speed Travel]
無印刷時速度(mm/s)。
左から60, 130, 200

差異はありませんでした。
初期値の130mm/sにします。

[FilamentSettings]



[Filament Diameter]
フィラメントの直径(mm)。
左から1.85, 1.75, 1.65, 1.55

大きくするほど、形が崩れます。
小さくするほど、全体が膨れます。
フィラメントの直径にはばらつきがあるようで、実際に測定する必要がありそうです。




現在使っているフィラメントの直径を測ってみました。
規格値1.75mmに対し、1.65mmでした。
この測定値をフィラメントの直径とし、細かな調整は次の乗数で行います。




[Filament Extrusion multiplier]
フィラメント送出量の調整値(乗数)。
左から0.9, 1.0, 1.05, 1.1

小さいほど痩せて形が崩れます。
大きいほど太って上部の方が形が崩れます。
形が最も崩れていないのは1.05なので、これを調整値とします。




[Temperature Extruder]
ノズルの温度(℃)。
左から190, 200, 210

高いほど上部の形が崩れます。
低いほど積層がはっきりと表れます。
表面が粗くなりますが、形が安定している190℃をノズル温度とします。
今回は測定していませんが、もう少し低い温度でも良いかもしれません。




[Temperature Bed]
ベッドの温度(℃)。
左から45, 70

差異はありません。
初期値の57℃にします。

[Printer Settings]



[Nozzle diameter]
ノズル径(mm)。
左から0.425, 0.45, 0.475, 0.5, 0.525

大きいほど全体的に太り、各層の境界が目立ち、部分的に細かな形状がつぶれたり欠けたりしてしまいます。
小さいほど全体的に痩せますが、細かな形状ははっきりとします。しかし、小さすぎると少量のひげが発生します。

ノズル径を直接測定はできませんが、工作機の精度の問題もありますので、ばらつきがあっても不思議ではありません。
そう考えると、規格値(0.5mm)をそのまま信じて設定すると、今回のように正確に出力できない場合がありそうです。

今回は0.45mmがもっとも正確に出力されました。
この値をノズル径とします。



試しにエクストルーダを操作して材料を押し出し、この径を測ってみました。
部分によって値は異なりましたが、直線の部分ではおよそ0.45mmであり、今回の設定値と合致しました。




[Z offset]
Z軸オフセット(mm)。
左から0, -0.3, -0.5, -0.55

大きいほど第一層と二層の間隔が狭くなり、大きいほど広くなります。
私の場合、Z軸の高さ調整(Z軸マイクロスイッチの位置調整)で比較的高く設定したので、第一層と二層の間に隙間ができていました。この値が-0.55mmで隙間がなくなったので、この値をZ軸オフセットとします。




[Retraction Length]
フィラメントの撤収長(mm)。
左から0.5, 1, 1.5

差異はありませんでした。
初期値の1mmにします。




[Retraction Lift Z]
フィラメントの撤収時の持ち上げ高さ(mm)。
左から0, 0.1

このパラメータは次の出力位置に移動するとき発生するひげを少なくする目的のはずが、値を設定するとひげが発生してしまいました。
今回のように逆効果になることもあるようです。
初期値の0mmにします。

[結果]



最終的な出力結果です。
全体的に形が整い、歯型などの細かな部分もはっきりとし、穴のひげもなくなりました。
上部に多少の凹みがありますが、調整前に比べれば、明らかに品質が向上しました。

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)の組立-本体調整

投稿 金 8/30 12:08:45 2013 | デジタル工作機 | hotall

現段階で一応出力ができるようになりましたが、その出力結果は決して満足できるものではありません。
3Dプリンターの組立に於いて、調整作業が本当の山場と云われるように、この作業の如何でプリンタの性能が決まります。

しかし、この作業は終わりがなく忍耐が必要です。
時には、調整する前より精度が悪くなくこともあります。
それでも、上手く行けば、市販の完成品に劣らない性能を発揮することができるのも事実です。

調整作業には、本体の機構面での調整と、制御データ(G-code)生成面での調整があります。
今回は機構面での調整を行います。
この文書は個人的なものであり、公式組立マニュアルから私の理解した事柄を補足的に記述したものです。この記述を参考に製作された場合の一切の責任を負いかねます。組立に当たっては、基本的にRepRapサイトの公式組立マニュアルを参考にしてください。



調整の前に、ヒーテッドベッドにカプトンテープを貼ります。
それは、出力途中で製品がヒーテッドベッドから剥がれたことがあったからです。
公式マニュアルでは、このような場合、カプトンテープを張ると改善するとありましたので、これを実施します。



テープを張る前に、ヒーテッドベッドの表面の油分を取り除きます。私はアルコールでふき取りました。




端から順番に貼っていきます。




表面を拭いて、中の空気を押し出します。




次のテープを前のテープと少し重なるように貼っていきます。




端の余分なテープを切り取って完了です。

確かに製品がピッタリとベッドに吸い付くようになりました。
カプトンテープの効果は高いようです。


既に前回までに次の調整を行いましたが、再度これらの点検します。

これらの他に、以下の位置決め機構のスケール調整を行う必要があります。





位置決め機構の調整を行います。
まずはZ軸です。
ツールからコマンドでZ軸を0mm位置に移動します。
G1 Z0 F200

フレームの上部に定規を貼り付けます。





フレームの上部に定規の0点が昇降台の上部に合うように貼り直すか、コマンドでZ軸を移動します。




ツールからコマンドでZ軸を現在の位置から上へ30mm移動します。
G1 Z30 F200 (現在位置が0の場合)

今回は指定通り移動したようです。
Z軸は長ネジ方式なので、このネジの精度と同じになります。ネジの精度は高いので調整することはあまりないでしょう。




次はX軸を調整します。
ツールからコマンドでX軸をベッドの端の当たりに移動します。
G1 X5 F400
ヒーテッドベッドに定規を乗せ、ホットエンドの台座に先を黒く塗った爪楊枝を貼り付け、定規の直ぐ上を指すようにします。




ツールからコマンドでX軸を現在に位置から上へ130mm移動します。
G1 X135 F400
今回も指定通り移動したので、調整は不要でした。




Y軸もX軸と同様に調整します。
ツールからコマンドでY軸をベッドの端の当たりに移動します。
G1 Y35 F400
爪楊枝の先に定規を移動します。




ツールからコマンドでX軸を現在に位置から上へ90mm移動します。
G1 Y125 F400
今回は指定した位置より短くなっていたので、ファームウェアのパラメータを調整します。
エクストルーダの調整と同様にM92のYパラメータを修正します。
修正値=現在の値 * 90mm / 測定した長さ(mm)
コマンドでこの修正値を設定し、EEPROMに保存します。
M92 Y<修正値>
M500




すべての調整が終われば、ネジロックで固定します。
特に以後調整が不要な部分と、振動が大きい部分を固定します。
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