3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)のCPU交換(ハード)

投稿 水 7/ 6 17:36:13 2016 | デジタル工作機 | hotall


先日のヒーテッドベッドの修理でCPUを破損してしまったので、新たな修理が必要となってしまいました。
Huxleyの制御ボードはArduinoの派生基板でMelziと呼ばれるものです。バージョンは2です。
Melzi ver2のボードはネットで安く手に入りますが、多くはモータードライバがver1のままのA4988が実装されています。これに対し、私の購入したボードはebay経由のRepRapPro純正の純粋なver2で、モータードライバも熱トラブルの少ないA4982となっており、会社が撤退した今、手放すには惜しい製品です。
そこで、CPUのみ交換することにしました。
この文書は個人的なものであり、読者による修理を推奨するものではなく、内容について一切の責任を負いかねます。


まず、CPUを取り外さなければなりません。

パッケージはTQFP。狭ピッチの4辺ピン配置で表面実装になっています。
これらすべての足を同時に加熱しなければ、取り外せない、少々厄介な代物です。

ホットブローや低温はんだなど、外し方にはいくつかあるのですが、今回は以前ネットで見つけた銅線を使用する方法を試してみることにしました。


銅線を用意します。
私はホームセンターで1.2mmのものを購入しました。

CPUのすべての足と接触するように、銅線を写真のように折り曲げます。

銅線の下の面が平らになるようにハンマーで叩きます。

微調整を繰り返して、CPUのすべての足が銅線に接触するようにします。
地道な作業で、数十分を要します。

銅線に予備はんだをします。

CPUを持ち上げるために、ワイヤーを足に通します。
私はラッピング線の被覆を剥いたものを使用しました。

CPUの二辺にワイヤーを通し、その上から銅線を置き、ワイヤーを縛ります。

更に縛ったワイヤーが解けないように、はんだ付けします。

銅線とCPUの各足にはんだを盛ります。

銅線の中央部にはんだごてを押さえつけるように当て、ワイヤーをペンチでつまみます。

銅線のすべての半田が解ける必要があるので、半田ごてのこて先は大きめのものを使用し、温度は高めにします。
わたしの場合、白光FX600にT18-C3のこて先を装着し、420℃に設定しました。

こてを当てて、すべての半田が融けるまで待ちます。今回は20秒くらいで融けました。

はんだが融けたら、ペンチでつまんだワイヤーを持ち上げるように力を加えます。このとき基盤が浮き上がらないように小指で押さえます。

CPUが外れました。

外したCPUです。
足が数本取れてしまいました。
今回は、再利用しないのでこれでもOKとします。

基板の方は、半田の一部が流れ落ちていますが、思ったよりきれいな状態です。

よく見るとランドの1つがめくれあがっています。
折れないようにそっと元の状態に戻します。

古いはんだを吸い取ります。

ランドに予備はんだをします。

新しいCPUを用意します。
CPUはATMEGAの1284Pで、8bitのRISCプロセッサです。
私は秋月電子通商から購入しました。

ランドに合わせて、CPUを乗せ、2本の足をはんだで仮止めします。

すべての足をはんだ付けします。
細めのこて先で低めの温度にします。今回はこて先T18-C1で320℃としました。
余分なはんだは吸い取り線で取り除きます。

最後に念のため、隣り合う足にブリッジがないことをテスターで確認します。

これで、ハード的な作業は終わりました。

この後、ソフト的な作業が必要となります。

3Dプリンタ(RepRapPro Huxley)のヒーテッドベッドの接触不良とCPU破損

投稿 火 7/ 5 16:04:26 2016 | デジタル工作機 | hotall

3Dプリンタが出力するのを見るのは楽しいものです。X、Y、Z軸の駆動装置がダイナミックに動く様子は、まるで意思のある生き物のように見えます。
Huxleyの場合、特にX,Y軸方向にベッドが激しく動くので、ベッドに繋がっているケーブルが断線するのではないかと心配になったりします。
案の定、先日、ベッドの温度が計測できなくなるようになりました。





ケーブルコネクタ辺りを触ると、現象が出たり出なかったりするので、このコネクタの接触不良のようです。以前も接触不良があり、補修した場所です。

良く見ると、ランドが浮き上がっています。
この基盤は、片面基板です。ランドはスルホールではないので、力がかかると剥がれ易くなっています。そのうえ、このコネクタはテーブルの移動とともに頻繁に力がかかるので、接触不良が起きるのは必然的と言えます。

まず、コネクタを外します。

元の端子は、直立端子で、端子自身が比較的長く、てこの原理で、接続部分には大きな力が加わります。
今回、この端子をL字型して、高さを抑え、加わる力を軽減します。

L字の長いほうを基板に差します。

基板の表側に出たピンをパターンに沿って折り曲げます。これにより、コネクタが抜けにくくなるのと同時にパターンとの接触面積を広げることができます。

はんだ付けします。
ランドのいくつかは既に剥がれてしまっているので、パターンのレジストを剥がし、そこにはんだ付けしました。

本来ならケーブルを接続して修理は完了のはずでした。

しかし、次の瞬間"バチッ"と火花が散りました。
「あ、しまった。」

ケーブルの断線をチェックした時に、装置の電源を入れたことを忘れ、通電したまま作業をしていたのです。
「やってしまったか。」

ソフトを立ち上げ、動作を確認します。
通信はできますが、ベッドとホットエンドの温度が異常な値を示します。
アナログ入力の故障です。電源ラインとショートさせてしまったようです。

この制御ボードのアナログ入力はCPUに直結されています。
CPUを見ると、見事にパッケージに穴が開いていました。

新たな問題発生です。

[追記]
問題の対策としてCPUの交換をすることにしました。

3D年賀状(2016)

投稿 月 1/ 4 17:10:34 2016 | デジタル工作機 | hotall

不思議なことに、過去に苦労したことは、その行為はよく覚えているですが、その苦労の程度は思い出せません。したがって、それが成功体験であれば、楽観的な思考のもと、また同じことを繰り返してしまうのです。

かつて、3Dプリンタを製作した年に、その応用として3D年賀状を試しに作りました。しかしながら、完成はしたものの、夫婦で徹夜作業となり、苦労した経験がありました。

あれから2年が経過し、今年も年賀状の季節となり、そろそろ準備をしなければと思案していると、あの3D年賀状の記憶が蘇ってきました。

そうだ、また作ろう。前回の経験を生かせば、今度は簡単に作れるはずだ。

こうして、この安易な決断が同じ轍を踏むことになるのです。




前回は小物入れを作りました。
今年も同じものでは面白みが無いので、何か別のものをと悩んでいました。

机に転がっているスマホを眺めながら、買い替える度に大きくなるこの装置の置き場がないことに気づきました。

スマホスタンドを作ろう。







来年は申年なので、造形のどこかに猿の形を取り入れようと思いました。
まずは頭に浮かんだイメージをラフなデッサンに書き出します。

猿がスマホを支えているイメージです。




デッサンを元に3Dのモデリングを行います。

はがきサイズに梱包するので、前回と同様に平板の部品を組み立てるものとします。

今回も123D Designを使いました。




出力します。

何とか1体分の部品をベッドに収めることができました。




組み立ててみました。

猿が支えているように見えます。
今話題の○○丸のポーズにも見えます。




早速、スマホを乗せてみます。

5インチのものは縦にも置けますが、6インチのものは横に置きます。
充電する時は、小さなコネクタのケーブルなら繋いだ状態で縦に置けます。そうでない場合は横に置きます。




これはイーゼルのようなものですので、サイズさえ合えば何でも置けます。

例えば小さなメモ帳。




メッセージカードなど色々置けます。




さて、どんどん出力し、人数分だけ作成します。
とは言っても、1セット出力するのに40分かかります。1回ずつ手でセッティングしなければならないので、寝ている間に出力するという訳にはいきません。
結局、出力するだけで丸二日かかりました。




そして、梱包です。

前回と同様に厚紙でパッケージを作ります。
内側に組立て図と配置図を、外側に宛名と絵を印刷し、切り取ります。
折り目を付けて、部品を配置し、糊で封をします。




出来上がりです。

一見すると表が宛名、裏が絵の厚みのある年賀状に見えます。

下表は今回設計・使用した部品の一覧です。
3Dデータ(STLファイル)もアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
猿部品4ダウンロード
パッケージ印刷1ダウンロード

今回も結構な作業時間を要してしまいました。
体力的な理由で徹夜はしませんでしたが、その代わりにすべてが終わったのは大晦日でした。
そしてこう思うのです。

「次回はやらないな。」

CDレシーバー(ONKYO CR-D1)の音が出ない

投稿 水 10/ 7 14:15:50 2015 | オーディオ・ビジュアル | hotall

音楽を集中して聞くことが少なくなりました。
聞くとしても、最近ではBGMとして、なんとなく流しているだけで、それも選曲すら億劫と感じているくらいです。
BGMとして以前はよくFMを聞いていましたが、その内容がトーク中心になるにつれ、自然と遠のいていきました。
それに対してトークもCMもほとんど入らずノイズも無いインターネットラジオは、今では唯一お気に入りの音源となっています。

そんな訳で9年前に買ったCDレシーバー(ONKYO CR-D1)は久しく電源を入れていませんでした。




先日、ほこりをかぶったこの機械が、ふと気になり、CDをかけてみました。
すると片方のスピーカーが鳴りません。

スピーカーコードを左右繫ぎ替えてみると、鳴らないスピーカーも逆転するので、どうやらこのCDレシーバーが問題のようです。

更にしばらく再生を続けていると、時々、鳴るようになったり、逆のスピーカーが鳴らなくなったり、症状が安定しません。
鳴るときは音自体に歪もなく音質は良好なので、どこかの接触不良です。
コネクタ周りを色々触ってみても変化はありません。おそらくは内部の半田クラックか接点不良です。

最近のオーディオ機器はボリュームもセレクターも半導体で、この機器も例外ではなく、唯一の信号系統で機械的接触を伴う部品はSP保護用のリレーです。
そこで、まずはこのリレーを交換してみることにしました。

この文書は個人的なものであり、読者による修理を推奨するものではなく、内容について一切の責任を負いかねます。
ユーザーによる修理はメーカーの保証・修理が受けられなくなる可能性があります。







背面5つ側面4つのねじを外し、ケースカバーを取り外します。

意外に中はさっぱりとしています。
昔のアンプは、電源トランスとパワートランジスタの放熱板がドーンとあって、いかにも力強い音が出そうな感じでした。
電源も信号回路もデジタルになると、こんな感じなんですね。




問題のSP保護用リレーは中段基盤にありました。
アクセスし易い場所なので基盤を外さずに作業ができそうです。




リレーの各足の半田を取り除きます。
ペーストを塗って、半田ごてで半田を溶かし、吸引器で吸い取ります。




6つすべての足の半田を取り除きました。




リレーを外します。
F&T(富士通高見澤コンポーネント株式会社)のF4AK009Tという製品です。
2回路a接点の9V、接点定格は5A30Vのリレーです。
中国製です。

さて、交換部品を手配しなければならないのですが、同じ部品は見つかりません。それどころか、オーディオ用リレー自体が2、3種類しか見つかりませんでした。
汎用リレーなら選択肢も多いのですが、SP出力はインピーダンスが数オームの回路なので接点抵抗が低いオーディオ用を選びたいところです。

手に入るもので唯一使えそうなのが、パナソニックのALA2F12です。
データシートを見る限り、形状や接点定格は問題ないのですが、コイルの定格がもとの部品が9Vに対し12Vです。
互換性があるとは言い難いですが、感動電圧が75%なので、ぎりぎり9Vで動作しそうです。



念のため、実際のコイルへの印加電圧を測ってみました。
8.87Vです。
ちょっと微妙ですが、製品の規格に対する余裕分に期待して、これを使うことにしました。




これが入手した部品:パナソニックのALA2F12です。
タイ製です。
共立エレショップからネットで購入しました。




並べてみると、全く同じ形状です。




取り付けました。




元通りにカバーを取り付けて完了です。
配線をして、試してみると、全く問題なく動作しました。
無事、直ったようです。

たまには、買い溜めたCDでもゆっくり聞いてみようと思います。


[追記]
問題のリレーを分解してみました。



外見上、摩耗などの劣化や破損は見られません。

余談ですが、コイルの巻き方が雑なような気がします。




接点を拡大してみます。
うっすらとした「くすみ」が見られます。

データシートによるとF4AK009Tの接点は銀合金が使用されています。
ネットで調べてみると銀合金の接点は接触抵抗が低く硬度が高いという利点があるため、広く採用されているが、欠点として酸化膜ができるそうです。この欠点については、通常、酸化膜ができても機械的な接触で剥がれることが多いとのことです。

しかし、この写真で見られる「くすみ」は酸化膜ではないでしょうか。

素人考えですが、我家の使用環境ではこの欠点は問題ではないかと考えます。動作頻度が低い場合は当然、機械的な接触が少ないわけで、被膜は剥がれず、どんどん形成される一方ではないかと・・・。

一方、今回交換した新しいリレー:ALA2F12の接点は、金ニッケル合金に金メッキで、硬度は低いが化学的変化に強いそうです。
私のように頻度が低い使い方には、こちらの方が適しているような気がします。
それに、やっぱり銀より金ですしね。

リーラペンダントライト(HED1067E/Panasonic)のリモコン化と取付け

投稿 土 3/28 18:04:16 2015 | デジタル工作機 | hotall

色々悩んで買ったものが、実は仕様が合わず使えなかったということがたまにあります。
こんな時は、結構落ち込みますよね。

先日、自宅の台所のレンジ周りが薄暗く、ペンダントライトを付けることを検討していました。




天井を見れば丁度良い位置にコンセントがついています。
後は、このコンセントに合うペンダントライトを探すだけです。

最近は、電気店も縮小の傾向にあり、ライトの品揃えも良くありません。
ますます、ネットで買い物をするようになってしまいます。

ネットで検索すると、色々なペンダントライトがヒットします。
今回は、レンジでの調理の時に上から照らす以外に、サイドテーブルで作業する時に手元を照らせるように、位置が下げられるリール式のライトが欲しいと思っていました。

目的に合う商品がいくつか見つかり、中でもコンパクトで使い勝手のよさそうな、PanasonicのHED1067Eを購入することにしました。

ところがこのライトは、階段などに使用することを想定しているためか、スイッチが付いていません。
実は天井のコンセントにはON/OFFができるスイッチが壁についていないのです。

これでは使えないなあと、引き続きネットを検索していると、シーリングライト用のリモコンスイッチがあることが分かりました。
これなら、リモコンを壁などに付ければ、手元でON/OFFできます。
これで問題は解決したと、早速、ライトとリモコンを注文しました。
数日後、商品が届きました。




これがペンダントライトです。
PanasonicのHED1067Eです。
上下できるようにリールの箱が付いています。




こちらがリモコンです。
オーム電機のOCR-04です。
上面にライトを繋ぐコンセント、下面に天井のコンセントに繋ぐプラグがあります。




さて取り付けようと、ライトの取り付けマニュアルと見て愕然としました。
このライトは、矩形の出っ張ったコンセントしか対応していないのです。天井のコンセントとの間に設置するリモコン本体は、出っ張りのないコンセントです。
しかも、ライトの台座は直接天井にねじ止めするようになっています。


色々と考えを巡らしながら、全く仕様が合わないこのライトは、オークションで転売するしかないと思い始めていました。

しかし、我が家には万能DIYツールの3Dプリンタがあります。
これで何とかできないかと考えました。

ライトの台座と、リモコン本体を固定できる方法があれば、リモコンからコンセントを外して、ライトの中で結線できるはずです。
しかしながら、ライトの台座とリモコン本体は大きさも形状も全く異なります。

そこで、3Dプリンタで両者を結合するアタッチメントを作成することにしました。

この文書は個人的なものであり、読者による改造を推奨するものではなく、内容について一切の責任を負いかねます。
ユーザーによる改造はメーカーの保証・修理が受けられなくなります。




まず、ライトの台座とリモコン本体のサイズを計測します。
両社とも形状が複雑なので、紙に形状を写して、スキャナで読み込むことにしました。



紙の上にリモコン本体を載せ、ペンで縁を写し取ります。




ライトの台座も同様に写し取ります。




スキャナで読み込みます。




draw系ソフトでスキャナで取り込んだ画像を読み込みます。今回はInkScapeを使用しました。




この画像にに合わせて、曲線としてトレースします。




トレースした曲線をSVG形式でファイルに落とします。




これを123D Designでインポートします。
インポートしたSVGデータは実際とスケールが異なるので、代表的な箇所の長さを計測し、形状データの拡大/縮小を行います。




インポートした形状を元に、アタッチメントを設計します。
アタッチメントとライトの台座は、ネジで縦方向に固定します。アタッチメントにはネジ穴を設けます。
アタッチメントとリモコン本体もネジで横方向に固定します。このネジ穴も設けます。
更に台座とリモコン本体もネジで直接固定します。




設計が終われば、これを出力します。




まず、リモコン本体を分解して中身を取り出します。




リモコン本体とアタッチメントを合わせた状態でライトの台座に組み付けます。ネジで上下方向に固定します。
次に台座とリモコン本体をねじ止めする為に、リモコン本体に穴を開けます。




台座とリモコン本体をネジで固定します。




アタッチメントとリモコン本体をねじ止めする為の穴をリモコン本体に開けます。




アタッチメントとリモコン本体をねじ止めします。




リモコン本体の中身を元通りに組み付けます。
ところが、ネジと基板が干渉してしまいます。




本来ならアタッチメントのネジの位置を変更して出力し直すべきですが、基板上の干渉する場所には回路がないので、今回は基板を削ることで対応しました。




台座の穴からリモコンのコンセントを引き出します。




リモコン本体の蓋をします。




コンセントの端子がむき出しになっているので、安全の為、ビニールテープで絶縁します。




ライトのプラグをはめます。




台座をライトに取り付けます。




これで出来上がりました。




赤外線受光部位置を確認して天井に取り付けます。




こんな感じになりました。
ライトとリモコン本体の形状に合わせて設計したため、一体感のある出来上がりに満足できる結果となりました。
3Dプリンタがあれば、こんな対処もできるものだと、便利さを再認識しました。


3Dデータ(STLファイル)をアップしましたので、個人的な利用の範囲で、自由にお使いください。
項目数量入手
アタッチメント1ダウンロード
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